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今治タオルの産地を訪ねて【蒼社川と工房織座】
今治市は、穏やかな気候と緑豊かな山、美しい瀬戸内海という自然環境を生かして柑橘類、木材などの農林業や、天然、養殖ともに漁業も盛んに行われています。私が訪ねた日は梅雨入りして間もない時でどんよりと曇り、雨がかろうじて降らないという天気でしたが、午後には時折日差しが出ました。私は中心市街地がある平野部(港も含め)と緑豊かな山間部(鈍川温泉の近く)に行くことが出来ました。山間部では、蒼社川(そうじゃがわ)を見に行くと共に、事前にネットで調べて興味深かった「工房織座」さんに行ってきました。
蒼社川
昔から蒼社川は、雨の多い時期になると氾濫を繰り返していました。平安時代初期には、「人取川」と言われ悪霊の祟りとして恐れられ、弘法大師(空海)が人々を集め堤防を築き蒼社川を鎮め泰山寺を建立しました。戦国時代から江戸初期に活躍した藤堂高虎(今治城を築城した)以降も藩主が、治水を行っていましたが、上流の花崗岩がもろく風化しやすい為に、川の流れに伴う土砂の流出が多く、川床が年々高くなり、洪水が繰り返されたのです。そこで、江戸の頃、享保7年(1722)の堤防決壊を機に、各村から2人1組となって川ざらえが行われ、毎年春に3日間行われました。その後、宝暦元年(1751)、今治藩主・定郷は、蒼社川の改修を計画し、洪水ごとに川筋を変えるあばれ川を、13年かけてまっすぐにし、堤防を高くして松を植え、川ざらえの制度を強化し、蒼社川はほぼ現在のような形になったそうです。それでも尚、洪水は起こり明治の頃には大災害が起きています。
洪水等で、悩まされた蒼社川ですが、恵みの川でもありました。洪積平野として、今治平野を形成し、染色業の発展を促しました。軟質の水は、晒しや染色に適しています。
尚、昭和46年には玉川ダムが完成し、洪水による被害が軽減されました。また、瀬戸内式気候により雨量が少なく、繊維工業の発展による人口増加などで旱魃(かんばつ)がおこる為に、農業用水の補給を行ない、さらに工業用水、上水道用水を確保する事も出来るようになりました。
山間部へ
今治駅から車やバスで30分程で山間部にある鈍川(にぶかわ)渓谷の方へ行けます。タクシーは蒼社川沿いを走って、山間部へと向かいました。街中の川沿いでも水は透き通り綺麗でした。山の方へ向うにつれて、川沿いに緑が増え綺麗な空気と共に海沿いとは違う田園風景、棚田が見えてきます。このあたりは、時間があれば歩いて散策したいと思う程の風景でした。
タクシーを降りると海に近い市街地とは空気が違う事に気が付きました。香りが違うのと、湿気が少ないのか空気が軽く感じました。梅雨入りしたばかりの5月末に行ったので、どの棚田も青々としていて、畑も多く作業している方を見かけました。山間に見える民家は、どのお庭も綺麗に手入れがされていて、色とりどりの花が咲いていました。
工房織座さん
自然に恵まれた美しい山間部に工房織座さんはあります。100年前の織機を独自に改造してショール、ストール、マフラー、スヌード、帽子と主に巻く物を製造、販売している会社です。木のぬくもりを感じるログハウスが3棟あり、店舗、工場、工房(織機で自分の作品がつくれます)になっています。こちらは、織機について調べていた時に見つけた工房で、100年以上前の織機を使って、製品を製造販売する事は大変なのでは?と、とても興味がありました。
店舗に入ってみると、自然の中に溶け込むような優しい色の商品がずらりと並んでいました。手に取ってみるととても柔らかくて、肌に優しい商品です。どれも織柄に特徴があり、見入ってしまいます。そこで、工房織座さんにご説明と共に工房も見学させて頂きました。
こだわりの織機
こちらにある織機は昭和初期の旧式の織機を全国から集め、復元し、改良を重ねた物です。写真の織機は、4台の織機を合わせて1台の織機になった物で、トヨタY式織機(豊田佐吉さん、トヨタの創業者が作った織機)とトビー織機(現在では「バーミキュラ無水鍋」で有名な愛知トビー㈱)を合わせてあるそうです。こちらの技術者は、最新式の織機も扱う今治タオルメーカー工場長を務めた方で、様々な商品開発をし、歴史的に貴重な旧式の織機の復元、織り方の研究もされていました。工房織座さんの商品は、そんな新旧の織機を熟知する方だからこそのこだわりがつまった商品です。
織りについて
最新の織機と旧式の織機、この旧式の織機を使う事で、最新の高速織機では織れない柄や風合いの物を作り上げる事が出来るそうです。
商品を見ていると、織り柄に特徴があることに気が付きます。波のようにカーブを描いたタテ糸の柄は、洗濯しても柄が崩れる事はありません。こんな事が出来るんだと不思議なのですが、タテ糸とヨコ糸を結ぶように織りあげる「もじり織り」をする事で、波のようなカーブを保つ事ができるそうです。
「たてよろけもじり織り」「たてよこよろけもじり織り」と初めて聞く柄ばかりで、平織り、綾織り、朱子織りなどの一般的な織り柄しか知らない私は工房織座さんの織り柄の多さに驚きました。
体験教室
3棟あるログハウスのうち1棟には、明治時代の足踏み織機でストールやマフラーを織る教室です。壁にカラフルな糸がずらっと並び、織機が2台並んでいて、ワクワクする空間です。小学生のお子様から大人まで、自分でデザインを考え、織り上げるのにおおよそ4時間程だそうです。足踏みなので、織るのはとても速く、みなさんすぐにコツをつかんであっという間に織りあげていくそうです。4時間程で織り上げて、持って帰れるので、旅行で訪れる方にもおススメです。今治駅からは路線バスでも行けるので、のんびりと路線バスで、風景を眺めながら行くのも楽しいと思います。
現在の工房織座さんは、店舗をリニューアルされ、白く明るい店内にカラフルな商品が並んでいます。
店舗のお知らせやonline shop、体験教室の受付など、今治駅前からの路線バスでの行き方もあります。
詳細はこちらから 工房織座
まとめ
今治市は、自然に恵まれ、それらを活かした産業で発展してきました。近代化されながらも、自然も大切にしてきたからこその発展ではないでしょうか?そして、昔からの技術を大切にしつつ、現代にあった商品の開発をする人々がいることで生まれる商品は、人に優しい商品です。
これから始まる夏休みには海も山も楽しめ、織物体験も出来る今治市に行ってみて下さい。
商品に関するご質問や気になることがございましたら、どうぞお気軽にお問い合わせください。
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